先月のコラムでご案内しました伊賀の新米プレゼントは準備が整っております。
今月はそのコメについて、どうしてコメ不足が起きたのか?
その原因・本当の理由について、私なりに考えてみました。
長文になりますが、お付き合いくださればありがたいです。
コメの流通業界は猛暑の影響で米粒が白濁(白く濁る)するなどの被害を受け、
また胴割れ粒などもあって、精米の歩留まりが低下した為、供給量が減ったとされています。
またインバウンドによるコメの消費増も原因としています。
私の住んでいる三重の田園地帯が広がる近くのスーパーでも、
8月中から9月初め頃にかけてスーパーの棚からコメが消えました。
南海トラフの地震臨時情報が出されたタイミングと重なり買占めもあったんだろうと思います。
しかしその後もなかなか入荷がされず、コメ不足が深刻な問題となりました。
その原因とされた上記の内容がおかしい。
まず、23年度産の作況指数は101だったはず、出来は良かったって事です。
インバウンドの消費に関しても月300万人が1週間日本人並みにコメを食べても
計算上消費量の0.5%程度の上昇です。
それに全ての外国人が日本人並みにコメを食べる事もないだろうし、
この二つの原因とされた内容はあきらかにおかしいです。
コメの国内需要は700万トンありました。
23年度は660万トン分しか作付けされてなかった。
元々不足が予想できたと言う事です。作況指数が101でこれですから、
もし不良とかになっていたら、もっと不足していたことになります。
(コメは年一回しか収穫できません)
これは農水省も理解していたはず。
ある研究者や学者は減反政策によって農水省とJAがコメの価格を上昇させるために仕掛けたこと。
その証拠に、政府の備蓄米を出さなかった。
100万トンもあるのに。と言っています。確かに結果から見ればそうだったかもしれません。
でも減反政策は終了しているし、なぜ今年に限ってコメ不足が起きたのかが理屈に合いません。
そして国は、減反を廃止し、作付け量を増やし、コメ価を元に戻せとの考えの方が多いようです。
これを主張している研究者や学者は私から言わせれば、
それこそ、全く、現場・現実・現物を見ていないのだと思っています。(幸之助さんの言葉をお借りしました。)
原因は作付面積が減っていることに変わりはありませんが、その理由は白濁やインバウンドではなく、
国税庁が22年10月に発出した「所得税基本通達の法令解釈通達」これが原因なんです。
給与所得者が副業や兼業で得た所得を事業所得と認めるかどうかをその副業の収入金額を300万円としたのです。
これは前年度にフリマ等を副業として確定申告を行い給与で払った税金を損益通算し還付を受けた人が増え、
そのことに危機感を持った国税庁が対策として、法解釈を変えたんです。
これが問題でした。
コメ農家の95%が赤字、90%以上が兼業農家の人たちは、この損益通算を利用しています。
これで、赤字の一部を補填しているのです。
また兼業農家で収入が300万円なんてあり得ません。
国税庁はそのことを考えていなかった。
後に行ったパブリックコメントでモーレツな反対があり、確定申告間近になって
農業は帳簿等の書類を保管すれば収入が300万円なくても、従来通りの損益通算できるとしました。
しかしこの内容を、大きく通達しなかった事で、知らずに損益通算しなかった人や、
確定申告自体をしなかった農家が増えました。
その証拠にJAへの出荷を減らし、または無くし、直接販売する農家が増えたんです。
(損益通算は販売実績が必要だが、損益通算しないならば買取価格の低いJAに出荷する必要がない)
JAは出荷を促すチラシを何度もいれていました。
そんなことがあり、ほんの少しの還付も出来ないならばと、多くの兼業農家が作付けをへらし、
また離農してしまった、と言う事です。
給与で得たお金を赤字の農業に補填する。その構図は昔から続いていました。
農業従事者の70%以上が65歳以上。
90%以上が兼業農家で全体耕作地の70%が10ha未満、その内3ha未満が84%なんです。
コメ農家の95%が赤字。一般のビジネス感覚からすれば、全く理解できない状態ですよね。
それを、
「先祖伝来の農地を守る必要がある」
「地域の住民同士の眼があり、荒らす訳にはいかない」
などの理由から、「自分の代までは、身体が続くまでは」と続けてきているのです。
兼業農家は農業で出た赤字を給与所得や年金の雑所得と損益通算する事で少し赤字をカバーしていたのです。
それをフリマなどで出た赤字を確定申告で損益通算した給与所得者対策として、
日本の食料安全保障に関わる問題にまでなるとは考えず、安易に法令解釈を変えた国税庁。
原因と責任は国税庁にあります。
もしここまで予想・計画し、農水省やJA、国税庁が結託しコメ価上昇と税収増を考えていたのなら、すごい事ですけどね。
研究者や学者が減反を止め、コメ価格を下げ、生産量を上げよと言っています。
それには農家へ直接支払う補助金を出せばいい。みたいなことを言っています。
これも現状を分かっていない。
今のコメ価格が例えば3倍になったとしてももう1000万トンなんて絶対無理なんです。
一度離農した、また作付けしなくなった耕作地は元には戻らない。
高齢化と同時に、ほんの小さな田んぼでもコメ作りをするには最低でも農機に500万円以上掛かります。
(トラクタ・田植え機・稲刈機・草刈り機等)
それらは7年の耐用年数です。例えば倍の14年使ったとしても、全て交換しなくても
どれか一つ壊れたら新たに買いなおして、引き続きするでしょうか?
年齢を考えたら、機械なしにはできません。年金収入では、新たに買い替えできません。
機械が壊れた時が離農のタイミングだと思うのが普通でしょう。
それらを考えると、今年も来年も必ずコメ不足になることが容易に想像できます。
それに価格も下がることはないでしょう。
コメ不足の原因は、国税庁。そしてそれに便乗しコメ価格を上げた農水省とJA。
私はそういうことだと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。