そうは問屋が卸しません!
今月はコンデンサのお話です。
電気は水に例えるとわかりやすいと言いますが、コンデンサは小さいダムと考えればイメージしやすいです。
入力される電圧が高いときには充電し、電圧が低いときには放電して、
あとへ続く回路へ流す電気量を一定にする役目をします。電子回路ではなくてはならない部品なのです。
そんな重要なコンデンサなのですが、最近、日系メーカー製のアルミ電解コンデンサのうち小型のもの、
特にリードタイプは生産が縮小傾向にあります。
といっても全ての日系メーカーがやめるわけではありませんし、海外メーカー品もあります。
それならば、いっそのこと小型のチップタイプのセラミックコンデンサに変更してしまおう!
という電子回路、電源回路の設計者さんも多いのではないでしょうか?
でも、実際“そうは問屋が卸さない”ですよね。
スペックが同じだからといって安易に置換することは危険なのです。
なぜなら、セラミックコンデンサには「直流バイアス特性」というものがあるからです。
「直流バイアス特性」とは、加える直流電圧によって*静電容量が変化するというものです。
*静電容量とは:コンデンサで蓄えられる電荷の量で、単位はF(ファラド)
参考 今さら聞けないスイッチング電源の基本Vol.5 セラコンを探すときの落とし穴 | 過去メルマガ一覧
それでは実際に小型のアルミ電解コンデンサと同定格の積層セラミックコンデンサ(高誘電率系)の
実効静電容量(最小値)を比較してみた場合、どうなるのかをみてみましょう。
小型アルミ電解コンデンサ 定格: 10μF 25V 許容差M(Mは許容差±20%)
積層セラミックコンデンサ 定格: 10μF 25V -10% X7R特性(使用温度範囲内での容量変化率)
・使用電圧はDC12V 周囲温度-10℃ の条件とします。
但し!
これはあくまでDC12Vの時のお話です。
その回路が5Vであったり9Vに変化するとなると、
それぞれの電圧で実効静電容量が変化する事に注意が必要です。
回路が正常に動作するために、静電容量が必要とする値より大幅に多い場合、
電気を蓄えるための時間が長くなりすぎ、正常に動作しなくなる事があります。
またその逆で、
回路が正常に動作するために静電容量が必要とする値よりも少ない場合、
必要な電気を蓄えられずに、同じく正常に動作しなくなる事があります。
アルミ電解コンデンサから積層セラミックコンデンサへ置き換える場合は
静電容量の変化を把握し、直流バイアス特性を考慮する必要があることをお分かりいただけたかと思います。
積層セラミックコンデンサへの置き換えをご検討される際の一助となれば幸いです。