切っても切れない「絶縁システム」
トランスは別名”絶縁トランス”ともいいます。
”トランス”と”絶縁”の関係は切っても切れない関係のはずなのに“絶縁”なんて!
今回のテーマはなんだか穏やかではない「絶縁システム」についてです。
感覚的にビリビリしなければ、絶縁ができていると思われるでしょうが、
そのビリビリ次第では感電、事故、人命にも関わってきます。
「絶縁システム」はとても大切な決まり事なんです。
トランスは銅線被膜、ボビン、テープ、ワニス、チューブなど絶縁材料の組み合わせで構成されています。
個々が高性能な絶縁材料だとしても、高温での動作のため熱劣化が起こりやすく、
温度定格も様々なので、組み合わせによっては絶縁が正常に機能しなくなる可能性があります。
絶縁と耐熱には密接な関係があるのです。
そのため、材料単体ではなく組み合わせた状態で試験、評価を行い、
安全性が認められた構成でなくてはなりません。
その指標として、「ULファイル」というものがあります。
「UL」とはアメリカの世界的な第三者安全科学機関の定めた規格で、
made in Japanと言えど、それに対応しなければなりません。
もちろん アメリカへ電気製品を輸出する場合はこの規格が必要になってきます。
「絶縁システム」とは、UL1446という規格に基づいた試験、評価を行った材料構成を
規定している規格のことです。
トランスにおいてUL規格に対応する場合、UL1446のULファイルに登録された製造工場で
ULファイルに登録された材料のみで製作したトランスがUL認証品となります。
例えば、いくら車の運転が上手で、交通ルールを守ったとしても、運転免許を持っていないと公道で
車を運転してはいけないのと同じで、工場もULファイルに登録していないといくらULファイルに
登録された材料をそろえて製造してもUL認証品とは認められません。
絶縁システムを適応する場合は、材料、メーカー等ULが認可したものに限定されるため、
設計の自由度は下がりますが、温度定格試験の免除や登録されているUL指定の条件下であれば
温度定格以上の耐熱クラス*でも使用できるメリットもあります。
前月号に引き続き、費用(お金)の話ですが、UL規格を維持していくのには維持費用がかかります。
年4回の工場検査もありますので、検査費用もかかってきます。ただULファイルへの工場登録がないと
お客様のご要望に応えられず、注文が取れないってことになりかねません。
弊社では海外工場をUL1446のULファイルに登録しており、UL規格のB種への対応が可能です。
検討またはお困りの際はお気軽にお問い合わせください。
*以前の技術ネタにある「耐熱クラス」の内容と少し関係があります。
耐熱クラスの詳細は過去の技術ネタ、下記URLをご参照ください。
【今さら聞けない】耐熱クラスのA、B、Eって?
https://www.kamidenshi.co.jp/magazine/2119/