耐熱クラスのA、B、Eって?
前回の記事では、トランスの温度上昇と、そこに周囲温度を足し算して達する温度=飽和温度が、
トランスの最高許容温度以下でなくてはならないことを解説しました。
今回は、トランスの許容最高温度の指標、耐熱クラスについて説明します。
当然ですが、トランスの耐えられる温度は、トランスを構成する材料が耐えられる温度に基づきます。
トランスは、使用された材料の許容最高温度で下記の耐熱クラスで表されます。
耐熱クラス | トランスの許容温度(℃) 電気用品安全法 |
絶縁材料の許容温度(℃) 日本産業規格 |
---|---|---|
A | 100 | 105 |
E | 115 | 120 |
B | 125 | 130 |
F | 150 | 155 |
H | 170 | 180 |
ここで重要なのが、トランスに使われる材料の中で、一番熱に弱い材料を基準に考える必要があります。
例えば、
130℃まで耐えられる(クラスB)絶縁テープと、
120℃まで耐えられる(クラスE)銅線が使用されたトランスが、
長時間130℃の環境で動作した場合、絶縁テープは許容範囲内なので問題ありません。
しかし、銅線は許容温度を超えているので、規定されている諸特性が満足できず、
絶縁抵抗の劣化等の症状に陥り、トランスが仕様通りの機能を果たせなくなります。
そのため、このトランスの耐熱クラスはB(125℃)ではなく、E(115℃)となります。
耐熱クラスは製品の絶縁性能に深く関係することもあり、元は「絶縁階級」とも呼ばれていました。
弊社ではトランス設計にあたり、使用用途によっては、想定される周囲温度をお聞きすることがあります。
通常の電子機器では達しない温度を想定し、材料選定や設計時の留意点としております。
想定される温度に対して、使用材料や形状を変更して、温度上昇を抑えるトランス設計ができるのは、
弊社の受注生産の強みとも言えます。
耐熱クラスは、トランスだけでなく、モーターや各種電子機器においても広く用いられる指標です。
極端に短命な電子機器にならないよう、考慮すべき重要な要素なのです。