一週間の海外出張が終わり、やっと関空に到着。
友人や、息子・娘夫婦への土産に、シンガポールで蘭の切花を沢山購入していたので、
その荷物を受け取り、検疫カウンターへと向かった。
その日は夕方到着の便がたくさんあったらしく、1階ホールはかなり混雑していた。
早く検疫を済ませて税関検査に並ばないと、これは相当時間が掛かりそうだ。
そう思って急いで検疫カウンターへ。
隣ではワンちゃんを連れた女性が何かしているが
植物検疫のカウンターには誰もいない。
ラッキー!
この蘭の花は以前の海外出張時にも何度か購入したことがあるので、
その度に植物検疫を受けている。
植物検疫は係の人が細かくルーペで確認するものだからとても時間が掛かる。
ゆえに前に人がいるとかなり待たされるのだ。
「検疫お願いします。」
そう係の人に声をかけた。
「中身はなんですか?」
「蘭の花です。切花です。」
そして検査台の上に梱包された花のダンボールを置いた。
すると係員が「花ですか~」と何やら曇った顔をした。
「検査証明書はありますか?」
「はい?何ですかそれ?」
「中身確認しますね。」
「お願いします。」
「あ~やっぱり花ですね。」
「そうですけど。」
「最近ダメになったんですよね。」
「えっ!?切花ですよ。土は付いていませんよ?」
「ええ、切花も厳しくなったんですよ。」
「どう言う事ですか?検疫をしてもらえないのですか?持ち込めないって言うこと?」
「そう言う事です。検査証明書がないとダメになったんです。」
「は?今までここで何度も検疫をして頂いて、持ち込んでましたよ?」
「・・・」
「法律が変わった?」
「いえ、法律は変わっていませんが、
最近外国人の方の持ち込みが増えたので運用が変わったんです。
今までは個人の方にはこちらで確認し、問題なければOKとしていたんですが、
それが出来なくなったんです。」
「変わったなら変わったってどこかに書いてあるんですか?」
そう質問すると、これです、とA4のチラシを手渡してきた。
「これは出国時に周知しないと分からないじゃないですか?」
「一応ポスターは貼ってあるんですがね。」
これ以上彼らにどうこう言っても仕方ないと思い、
「もういいです!」と言ってその場を離れた。
蘭の切花をカウンターに置いたままにして。
何でも法律はこうだ。
それに彼らは決められた事しか出来ないし、やらない。
今回のような事があっても、自分達では何も出来ないし、もしやりたくても出来ない。
多分ポスターの量も増やす事はしないだろう。
そのことを知らない人が悪いだけで、自分達に非はないのだ。
だから「寄り添う」ことなど、相手の立場になって考える事などしない。
しかし我々一般企業は違う。
クレームや苦情は貴重だ。
何故ならお客様からのクレームや苦情には製品やサービスへのヒントがあるからだ。
それを放っておいたらどうなるか。
買ってくれなくなるだけ。
ただそれだけ。
いくらでも代わりがあるんだから。
お客様からの意見は会社のダメな所への指摘。
それはつまり良くなる為のアドバイス。
そして自分達で改善することが出来る。
会社はルールを変えられるのだ。
『耳にはいつも聞きづらい忠言や諌言を聞き、心にはいつも受け入れがたいことがあって、
それで初めて道徳に進み、行動を正しくする為の砥石となる』
これは中国の古典、「菜根譚(さいこんたん)」の一節ですが、
「辛さや大変さこそが成長の材料になる」と言う意味で、
日々成長して行かないといけない企業には大変重い言葉です。
人から色々言われるのは嫌な事だ。
だけどそれを冷静に一度受け入れて、考えてみる。
お客様の困った事には必ずビジネスチャンスが隠れている。